人間の証明 Proof of Humanity by角川人質司法違憲訴訟弁護団

角川歴彦の人質司法について

監獄からの生還

無罪推定が及んでいるはずの226日間で
角川歴彦は何度も死線をさまよった。
病気で苦しんでいるのに、
保釈は認められず、
病院に行くこともできない。

裁判で無実を主張している人ほど
“人質司法”によって
保釈が認められにくいからであった。
監獄から生還した角川は、
この国の非人間的な刑事司法を
変えることを誓った。

一流ホテルの一室で”逮捕します”

2022年9月14日、角川に対し、東京五輪汚職事件に関する贈賄容疑で逮捕状が呈示された。株式会社KADOKAWAが東京オリンピックの公式スポンサーに就任するために、組織委員会理事の関係者に賄賂を渡したとされる事件である。

何の決裁権も持たず、部下から何の相談も受けていない角川にとっては寝耳に水の話であった。それまで自身が何も関与していないことを知ってもらうためにもっと徹底的に取り調べてほしいと思っていた角川は、「ずいぶん急ぐんですね」と答えるのが精一杯であった。

自身の無実と部下のことを信じていると記者に訴えたわずか9日後の出来事であった。

人間として生きる権利

午前7時に起床すると、正座して看守を待ち、点呼が行われる。「8501,角川歴彦」角川は番号の後に、必ず名前を名乗った。東京拘置所の窓は、窓ではない。逃走防止のために外の景色が見えないのだ。反対に、トイレは廊下から丸見えになる。

週に2度の入浴、30分の運動、麦ごはんと汁物と惣菜の決まりきった食事、生命維持にとって最低限のことだけが施される。角川は当時79歳、心臓の持病があり病院での手術が予定されていた。しかし、拘置所での治療は対症療法のみで、持病を治療することはできなかった。

弁護士と主治医は、「命にかかわる事態が生じかねない」「手術の必要性は極めて高く、状況は緊迫している」と保釈を訴えた。これに対し、検察官は角川が証拠を隠滅したり逃亡したりするおそれがあるとして保釈に反対し、裁判官も保釈請求を却下した。

まるで、ここには人間がいないようであった。

”角川さんは死なないと出られません” ”角川さんは死なないと出られません”

その後も角川は、コロナウイルスに感染し、体重が減少し、白目をむいて失神した。拘置所の医師は嘔吐する角川を見て見ぬふりして通り過ぎたこともあった。

「何とかここから出られないのか」そう訴える角川に対し、医師はこう言った。「角川さんは死なないと出られません。」隣の医務官もうなずく。

角川に対する死刑判決に他ならなかった。

冤罪を生む人質司法 冤罪を生む人質司法

二度の保釈請求に対し、検察官は人事権を用いて社員に働きかけるおそれを強調し、いずれも裁判所は保釈を認めなかった。既に死の淵に瀕していた角川は、株式会社KADOKAWAの取締役のほか、各企業の要職を辞任せざるを得なかった。それでもなお検察官は保釈に反対し、裁判所も3回目の保釈請求も却下した。

他の共犯者とされる者は早々に保釈されていたところ、角川との違いは、共犯者らは自白し、角川は容疑を否認しているということだけだった。

日本の刑事司法には、裁判で無実を訴える人ほど身体拘束がされやすく釈放されにくい実務運用があり、これは「人質司法」と呼ばれて批判されている。自分の身体を「人質」に取られ、それまで培ってきたものをできる限り放棄し、自白をしたり裁判の争点を減らしたりするしか保釈を得る方法がないからだ。

実際に角川が保釈されたのは、検察官請求証拠を刑事裁判の証拠とすることに大幅に同意した直後であった。

角川人質司法違憲訴訟 角川人質司法違憲訴訟

東京五輪汚職疑惑による突然の逮捕から、無実を主張し続け226日間勾留、生死の境を彷徨った角川歴彦は、「人質司法」に対する憲法及び国際人権法違反の判断を求め、日本の刑事司法の現在の在り方を、人権の原理原則から問い直す訴訟を2024年6月27日に提起しました。

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